保守契約を見直す前に
エレベーター保守会社の選び方ガイド
保守会社を比べるときに押さえておきたい制度と契約の基本です。ここでの説明は一般的な内容で、実際の契約範囲・費用は会社と契約書によって異なります。
1. 法定の定期検査と、日常の保守点検
エレベーターには、建築基準法にもとづいて所有者(管理者)が定期的に検査を受けさせ、その結果を特定行政庁に報告する「定期検査報告」の制度があります。これとは別に、安全に使い続けるための日常の保守・点検があり、多くの建物ではこの保守・点検を保守会社に委託しています。定期検査を保守会社に一緒に頼めるかどうかは、会社と契約によります。
制度の詳しい内容は、下の「出典つきの要点」と国土交通省の資料をご確認ください。
2. POG 契約とフルメンテナンス契約
保守契約は、部品の交換費用をどこまで月々の契約に含めるかで、大きく 2 つに分かれます。
| 項目 | POG 契約 | フルメンテナンス契約 |
|---|---|---|
| 名前の由来 | パーツ(Parts)・オイル(Oil)・グリース(Grease) | 保守を一括して(フルに)委託する |
| 含まれるもの(一般例) | 点検・調整と、消耗品の補充・交換 | 点検・調整に加え、劣化した部品の修理・交換 |
| 別料金になりやすいもの | 消耗品以外の部品の修理・交換 | 契約で除外された部品・意匠部品・改修工事など |
| 向いている考え方 | 月々の費用をおさえ、修理は修繕計画で別に備える | 費用を平準化し、突発的な修理費を減らしたい |
どちらの場合も、「何が契約に含まれ、何が含まれないか」は会社ごとに違います。見積もりを比べるときは、月額だけでなく、契約範囲・除外部品・点検の頻度・故障時の出動を同じ条件にそろえて確認しましょう。
3. メーカー系と独立系
メーカー系は、エレベーターを製造したメーカーのグループ会社です。独立系は、特定のメーカーに属さずに保守を行う会社です。どちらが良いかは建物によって変わるため、次の点を確かめて比べます。
- いまのエレベーターのメーカー・機種・設置年に対応できるか(公式に「全メーカー対応」とあっても、機種によっては難しい場合があります)
- 交換部品の調達方法と、部品の供給が終わった機種への対応
- 建物の近くに拠点があるか、故障・閉じ込め時に何分程度で駆けつけられるか
- 遠隔監視の有無と、監視していない時間帯の対応
- 将来のリニューアル(改修・更新工事)をどこに頼むか
4. 保守会社を見直すときの確認項目
- いまの契約書の契約形態・契約期間・解約の申し出期限(何か月前までか)
- エレベーターのメーカー名・型式・設置年(かご内や機械室の銘板、検査済証などで確認)
- 直近の定期検査報告の結果と、指摘事項の有無
- 見積もりの比較条件(点検頻度・契約範囲・除外部品・緊急出動・遠隔監視)をそろえる
- 切り替え時の引き継ぎ(遠隔監視装置の扱い・保守記録の受け渡し)
- 複数社から見積もりを取り、管理組合やオーナーの意思決定の記録を残す
5. 出典つきの要点
- エレベーターの所有者・管理者は、建築基準法に基づき、昇降機を常時適法な状態に維持するよう努める責任がある。出典: www.n-elekyo.or.jp(確認日 2026-10-18)
- 建築基準法第12条第3項により、所有者は昇降機等検査員などの資格者に昇降機を定期的に検査させ、その結果を特定行政庁に報告する義務がある。出典: www.mlit.go.jp(確認日 2026-10-18)
- 定期報告の対象には、エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機が国の政令で一律に指定されている。出典: www.mlit.go.jp(確認日 2026-10-18)
- 定期報告の義務を負うのは建物の所有者(管理者)で、報告先は特定行政庁(建築主事を置く自治体)である。出典: www.mlit.go.jp(確認日 2026-10-18)
- 昇降機の定期検査報告は年1回が基本で、鳥取県は「前回報告した日から1年以内」としている。報告時期は自治体ごとに定められる。出典: www.pref.tottori.lg.jp(確認日 2026-10-18)
- 愛知県では昇降機の定期検査報告を、検査済証の交付を受けた月に応じた時期に毎年行い、受付は一般社団法人中部ブロック昇降機等検査協議会が担う。地域によって報告の窓口が異なる。出典: www.pref.aichi.jp(確認日 2026-10-18)
- 住戸内だけを昇る昇降機(ホームエレベーター)は、定期報告の対象から除かれている。出典: www.pref.aichi.jp(確認日 2026-10-18)
- 建築設備・昇降機の定期検査は、法令で定められた資格を持つ者でなければ行えない。出典: www.mlit.go.jp(確認日 2026-10-18)
- 昇降機の検査項目と判定基準は平成20年国土交通省告示第283号に定められ、エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機などの種類別に基準と検査結果表がある。出典: www.mlit.go.jp(確認日 2026-10-18)
- 国土交通省は平成28年2月19日に「昇降機の適切な維持管理に関する指針」を公表し(令和6年9月に一部改訂)、保守点検業者を選ぶときの留意点や契約に盛り込む事項のチェックリストを付けている。出典: www.mlit.go.jp(確認日 2026-10-18)
- 国土交通省の「エレベーター保守・点検業務標準契約書」は、専門知識のない所有者・管理者が保守点検業者と契約する際の参考として作られた標準的な契約書である。出典: www.mlit.go.jp(確認日 2026-10-18)
- 保守点検の記録は3年以上保存する必要があるとされている。出典: www.n-elekyo.or.jp(確認日 2026-10-18)
- 日本エレベーター協会は、保守会社を選ぶ際に価格だけで決めず、技術力、実績、業務への姿勢を総合的に判断することが望ましいとしている。出典: www.n-elekyo.or.jp(確認日 2026-10-18)
- POG契約は点検や調整・消耗部品の交換までを含み、フルメンテナンス(FM)契約は月次点検に加えて修繕部品の交換や修理費用まで含む契約として、メーカーが説明している。出典: moriya-elevator.co.jp(確認日 2026-10-18)
- 日立ビルシステムは、従来のエレベーター保守契約はフルメンテナンスとPOGの2種類だったと説明し、POGは部品交換費用を含まない契約と定義している。出典: www.hbs.co.jp(確認日 2026-10-18)
- 国土交通省は、事故発生時に保守点検業者が迅速に現場へ到着できるよう、緊急通行車両制度などの活用を案内する事務連絡(令和8年6月11日)を出している。出典: www.mlit.go.jp(確認日 2026-10-18)
参照した公的資料
- 一般社団法人日本エレベーター協会「協会会員名簿(正会員90社・賛助会員29社)」(確認日 2026-10-18)
- 一般社団法人日本エレベーター協会「エレベーターの保守点検(ご利用について)」(確認日 2026-10-18)
- 国土交通省「昇降機(エレベーター、エスカレーター等)について」(確認日 2026-10-18)
- 国土交通省「建築基準法に基づく定期報告制度について」(確認日 2026-10-18)
- 国土交通省「オンラインを活用した定期報告について」(確認日 2026-10-18)
- 国土交通省「「昇降機の適切な維持管理に関する指針」等を公表(報道発表)」(確認日 2026-10-18)
- 愛知県「定期報告制度(建築基準法第12条)」(確認日 2026-10-18)
- 鳥取県「定期報告制度(昇降機設備)」(確認日 2026-10-18)
- 一般社団法人 日本エレベータ保守協会「会員紹介」(確認日 2026-10-18)
- JEMAエレベータメンテナンス事業協同組合「北陸地方保守会社のご紹介」(確認日 2026-10-18)
- エレベーター保守事業協同組合「組合員リスト」(確認日 2026-10-18)
- JEMAエレベータメンテナンス事業協同組合「九州地方保守会社のご紹介」(確認日 2026-10-18)